「あなたの息子は生きる」(2018/05/13 熊江秀一牧師)

「あなたの息子は生きる」 詩篇86章5節~13節/ヨハネによる福音書4章43節~54節

熊江 秀一牧師

主イエスのもとに役人が来て、病気の息子のいやしを願った。その時、主は「しるしや不思議な業を見なければ、決して信じない」と厳しい言葉を告げた。しかし彼は諦めず、イエスを「主よ」と呼んだ。そんな彼に主は「帰りなさい。あなたの息子は生きる」と告げた。役人は主の言葉を信じて帰って行った。

 

この時、自分の息子が助かるという目に見える確証はなかった。ただ「あなたの息子は生きる」という御言葉があっただけである。役人はただ御言葉を信じた。

 

この箇所の並行記事は「百人隊長の僕(しもべ)をいやす」である。別々の物語のようにも思えるが、元は同じ物語である。僕は「息子」とも訳すことができる。そしてヨハネはこのいやしを、ただ御言葉に聞き従う信仰に焦点を当てたのである。

 

これはヨハネ福音書のテーマである。元々20章までの福音書のクライマックスは、復活の主を疑ったトマスの物語であった。その最後に主は告げる。「わたしを見たから信じたのか。見ないのに信じる人は幸いである」。

 

しるしや奇跡を見るから信じるのではなく、ただ御言葉を信じる。これが、迫害の中にあったヨハネ教会の立つべき姿であり、目に見えるものだけが価値と思われている現代日本に生きる私たちが、立つべき信仰の姿である。

 

主は「あなたの息子は生きる」と語った。「治る」ではなく「生きる」、すなわち病気の癒やしのことだけでなく、死を超えた命があること。主イエスを信じる者には、死によっても損なわれることのない、まことの命が与えられる。その希望もこの物語は与える。ただ御言葉を信じる一筋の心を与えていただき、死を超えた命を革新して、信仰の道を歩もう。